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まで海中に滞在することができる。
2. 飽和潜水と海中研究室
海中と同じ圧力の高気圧環境下で呼吸を行うと、その環境圧に比例した環境ガス成分が体内に溶け込んでいく。しかしその溶解量は同じ環境下であれば24時間でほぼ飽和する。逆に減圧時には体内に溶解した環境ガス成分が肺内で気化し、体外へ排出されていくが溶解しているガス成分が飽和していれば安全に減圧するための時間は、滞在時間に無関係になる。
そのため、長時間の高気圧下に滞在する潜水法は、スクーバ潜水に比して有利な潜水法となる。これが飽和潜水1)の概念である。
現在までに、飽和潜水の概念を適用した海中に居住する試みは日本国内では、海洋科学校術センター(Japan Marine Science and Technology Center(JAMSTEC))が行ったシートピア計画(1969年から1973年)がある。シートピア計画2)は、水深60mに設置した海中居住室内をヘリウムと酸素を混合したガスを環境ガスとして用いた。現在の科学潜水では、ヘリウム-酸素のかわりに空気の成分に近い窒素と酸素の混合ガスを環境ガスとして用い水深50mぐらいまでの海中潜水が行えることを目標とした研究が海洋科学技術センターで進めれている。Fig.1に現在構想中の海中研究室の外観を示す。

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Fig.1 Underwater Laboratory System

3. 高気圧用環境制御装置
飽和潜水の概念を利用した海中研究室のような高気圧居住空間においては、その空間の圧力、温度、湿度、さらに環境ガス中の酸素、炭酸ガスの分圧制御などの環境制御が必要となる。Fig.2に環境制御要素のツリーを示す。特に高気圧下の室内に蓄積する炭酸ガスは現在、使い捨ての吸収剤で除去する従来からの方式が採用されており、吸収剤の定期的な交換作業、未使用及び使用済み吸収剤の保管スペースを限られた海中研究室内で確保する必要がある等、不利な点が多い。このため高気圧下で炭酸ガス吸着剤の自動再生機能を持たせた高気圧用炭酸ガス除去置の開発が望まれているところである。
本研究は吸着剤の自動再生を行い、省力化・省スペース化を図ることのできる炭酸ガス除去をその主な目的とした高気圧用再生式炭酸ガス除去装置の開発を目的としている。
Fig.3にその高気圧用炭酸ガス除去装置の概念図を示す。図中に示す矢印は処理ガスの流れを示している。この炭酸ガス除去装置では、炭酸ガスの除去効率を上げるために処理ガスを除湿剤の入った除湿筒に送り、処理ガス中の水分を取り除く。その後、吸着剤を充填した吸着筒を通過させ、炭酸ガスを薬剤に吸着させる。吸着筒及び除湿筒はそれぞれ2組あり、もう一方の筒では加熱器により薬剤の温度を上げるとともに、吸着筒内の圧力を下げ、炭酸ガスを脱着させる、脱着させた炭酸ガスは、研究室外から海上に導設したホースを介して海上大気に放出する機構としている。

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Fig.2 Enviromental Control Tree

4. 炭酸ガス吸着基礎試験3)
高気圧用再生式炭酸ガス除去装置の開発のため、第1段階として、炭酸ガス吸着剤の基礎試験を実施した。

 

 

 

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